「フランスの最も美しい村」赤いルシヨン
当初は行く予定ではなかったリュベロン地方。たまたま絵本でみかけたルシヨンという村の特殊感がひっかかり、日帰りチャーターがいっぱいだったり、あきらめポイントが多数あったにもかかわらず、とりあえず行けるかどうかを調べてみた。
ちなみにルシヨンは、「フランスのもっとも美しい村」にリュベロン地方で2番目に登録された赤土の村。オークル顔料の産地だった。
しつこく交通機関を調べているとアプト~カヴァイヨン間にバスが存在することがわかった。俄然、訪れる気になる。
しかし、渡航直前に、そのバスは9月末までと判明。でもエクスからルシヨンの10km手前のアプトまではバスがある。こっちはちゃんと走ってるようだ。10kmくらいならタクシーでも痛くないだろう。
アプトまでは、TransVaucluse社のバスLine9で向かう。エクスではマイナーな会社なので、巨大なエクス・アン・プロヴァンスのバスターミナル(バス停が20もあるのに)に入れず、ターミナルのさらに先のバスターミナル(はみ出し組バス会社用?)から出発だ。アパートからバスターミナル入り口まで15分歩き、そこからアプト行きバス停まで10分以上歩く。
フランスの路線バスは、曜日ごとに、時期によって運航がかなり異なる。一見バスがあるようでも、時刻表を注意深く確認しないと、自分が乗りたい便があるかわからない。
ちゃんと「9 APT」の行先表示のバスが来ただけで感激。このバスは、長距離高速扱いではないのか、60kmを2.3€という安さ。おまけに、リュベロンの他の村々(ボニュー、ルールマランなど)の中を抜けたりかすめたりしながら、プロヴァンスな陽光浴びる紅葉ならぬ黄葉の風景に包まれて走っていくので、お得だった。ただ、トイレ休憩はないが、各5分程度のたばこ休憩が何度か設けられていていた。
昼前にアプトのバスターミナルに到着した。
さあ、タクシーに乗り換え。と思ったら、タクシーはどこにもいない。バスターミナルがあるほどの拠点なのに。
アプトはエクスとはかなり雰囲気が違う。マルシェは日用品(おしゃれじゃないヒャッキングッズみたいなの)が並んでいる。
近所のホテルで呼んでもらおう。と思ったら、午後3時までフロントはお休みで施錠されていた。しかたないので、郵便配達中のおにいちゃんにタクシーに乗るには?と尋ねる。タクシー会社をGoogleMapで教えてくれた。
GoogleMapに導かれて10分歩くと、たどりついたのは、タクシーの「車庫」だった。
ほんとに車しかない。人がいないじゃん。
途方に暮れていると、営業を終えて戻ってきたタクシーがやってきた。 駆け寄って、「ルシヨンに行きたい」と訴える。 ちょっと待ってて、と車を変えて対応してくれるマダム・ドライバー。営業は終わったが、自家用車で距離計算の明朗会計でルシヨンへ連れて行ってくれた。行先は、ルシヨンの観光案内所。印刷しておいたGoogleMapで行先指示できてよかった。
アプトから10km。ルシヨンに近づくと突然、土も塀も家の壁も赤っぽくなる。
なぜか、ルシヨンのあたりだけが赤い土。
無事に連れてきてもらったルシヨンの
村の入り口にあったカフェは、ちょうど前の客で満員になってしまった(食べそびれポイント1)ため、le sentier des ocres(
オークルの道)という遊歩道へ行くことにする。30分コースを撮影しながら1時間で赤い赤い土を踏みしめて周った。
唯一のよい予想外として、ここの入り口手前にトイレがあった(紙はなかったがきれい)。
かつて、オークルの顔料採掘をしていた場所で、各色のオークルがむき出しになっている。
オークルといっても、黄土色だけでなく、白、黄、オレンジ、ピンク、紫、褐色・・・と豊富。カラフルな地層の断面は、インスタ映えのケーキカット面みたいだ。
オークルの地層は、極端に色が異なる層が隣接して重なっている。不思議だ。
濃いオークルっぽい色の層の下は、いきなり白い層だったり。
近所に顔料の工場があり、平日(オンシーズンだけかも)は見学や体験ができるようだったので、行ってみたかったな。
日陰部分には霜が残っていた。
起伏があって 空いているので、犬のトレーニングしてる人もいた。
視界のすべてが赤すぎるので、葉っぱが「青」に見えてしまう。
ルシヨンはリュベロン地方ではメジャーな村なので、観光シーズンはけっこう賑わうらしい。が、超オフシーズンなので、村いちばんの有名なレストランDavidは休館中。ここが開いていれば、絶景テラスでランチのはずだったのだが。残念。
人がいないこともあり、より一層、異空間っぽい雰囲気に包まれていた。
村の入り口にある観光案内所。
シャッターが下りかかっていたので閉店だと思ってしまった。
実は昼休みで不在だっただけだと、後でわかった。わかっていれば、ここでタクシーを呼んでもらったのに、画材屋でアプトのマダムドライバーに電話してもらってしまった。タクシーを呼ぶと、出動した場所からの距離分の料金がかかるのだ。だから、ルシヨンから乗る場合は、ルシヨンの観光案内所で呼んだほうがよいのだ(と、マダムドライバーが言っていた)。
平日なら、オフシーズンでも1日1本、観光案内所の隣のバス停にバスがあった。
村の頂上にある教会。
この広場にあるカフェは営業していた。さっきまでは。
「オークルの道」で散歩しているうちにランチタイムは終了し、カフェは閉まってしまった(食べそびれポイント2)。
広場から、村の入り口方面を見下ろす。店の扉は閉ざされ、人の気配のない赤いオモチャの街。
村の中は、オークルの顔料を使ったしっくいで作られた壁なので、どこもかしこもピンクの世界。 ピンクの壁をつたう枯草もピンク系。
壁がはげかけてもピンク系。
南仏最初の観光がルシヨンだったので、いろいろショックを受けたが、バスがない日にも関わらず、実は観光案内所もレストランも画材屋もオークル遊歩道も 営業していたのだから、けっこう優秀なほうだったのだと、のちに思った。
土産物屋は、レストランDavidの隣のファブリック屋さんのみ。
あとは、画材屋が数件開いていた。画材屋だけは開店しているところがこの村ならではだね。
どこかの高級ブランド店かと思うような豪華な店構えの画材店もあった。
「オークルの道」でトレーニングを終えた犬たちも店頭で興味津々。
さえない土産物屋っぽい店頭の印象とは違い、中は、ちゃんとした画材屋。
顔料がたくさんあった。オークルの産地なので、赤色系だけかと思ったら、各種あって嬉しくなる。
ガラス瓶に砂絵ならぬ、各色のオークルで作られたアートなお土産もあった。
パステルか顔料のミニボトルかで迷ったが、色数の多さでミニボトルをゲット。
帰国時、このミニボトルたくさんの入った木箱を背負っていたら、マルセイユ空港出国検査で荷物を取り調べられてしまった。粉の入った小瓶をたくさん運び出そうとしていたからね。
プロヴァンスのお守りはセミ。ということであちこちでセミグッズが売られていたが、ルシヨンのものがいちばんセンスがよかった。
ゴルドは、リュベロンの村の筆頭に挙げられる。「フランスの最も美しい村」リュベロン地方登録第1号。 タクシー走行中に見ていたGoogleMapでゴルド直前になっても、村らしきものはなにも見えなかったのに、丘を登って行くと、急に村が出現してびっくり。
村の中央にあるゴルド城。
ゴルドは、映画「プロヴァンスの贈りもの」の舞台になったところだ。
映画に出ていたこの広場にバス停があるはずだと探し回っているうちに真っ暗になってしまう。
38人の住人に対して年間の訪問客が100万人!ということだが、11月下旬の週末の日没後には人の気配がほとんどない。
暗い。寒い。さっきまでやってたカフェも入り口がチェーンでブロックされてる(食べそびれポイント3)。
白いゴルドが赤く染まる夕暮れ時。
真っ赤な夕暮れの空はドラマチックだ。
村の中央にあるゴルド城の中にある観光案内所は、しっかり閉まっていた。
ゴルド城の向かいには、レトロなロクシタン。黄色のシャッターが下りていた。 村の中心部から宿へ戻る途中にあるホテルのレストランに寄ってみるが、ここも食事はおしまいと断られた(食べそびれポイント4)。
これが、宿泊したDomaine de l'Enclosの建物正面。 道路に面した門からは見えない奥にあるので、タクシーのドライバーがついてきてくれた。
部屋からは、プロヴァンスっぽい風景が広がっている。
宿のリビング。グランドピアノもビリヤードもある。
この宿、外に「BAR」の看板出してたっけ。ツマミでもいいから食べ物ないかな。ささやかな期待をしたものの、非情にもメニューはドリンクのみだった(食べそびれポイント5)。というか、そもそもバーは営業していなかった。
画像右のスツール3個あるところがバーカウンターだ。
食べ物にありつけなかったので、部屋に用意されていたエスプレッソがありがたかった。4個用意されていたのをもったいないので、アメリカンにしていただいた。
結局、翌朝の宿の朝食まで26時間くらい食べられなかった。ああ、余ってたお菓子でも持ってきていればよかった。
空腹は置いておいて。
広い庭は散歩できる。プールもある。
建物が小さく感じる。
朝食のダイニングは、カラフルでおしゃれな配色。
美しい庭を眺めながらの朝食は、よい素材のパンと生ハムとチーズとフレッシュジュースや果物などが数種類ずつで、この宿らしいすばらしい食事が用意されていた。朝食は9時からなので、食べたい人はゆったり計画しないとね。(朝食付き2人で100€ちょっと)
ルシヨンからエクスまでタクシーで帰るより宿泊費のほうが安いから、という理由で泊ったのだが、ここを選んで正解だった。
旅程メモ:
11/18(土)
1.バスTransVaucluse line9 2.5€
AIX EN PROVENCE Europe Gare Routière 9:40 ⇒ 11:55 APT Gare Routière
2.タクシー 11.5km 27€
Apt⇒Roussillon
3.タクシー 約12.4km 49€
Roussillon⇒Gordes(B&B Domaine de l'Enclos)
オンシーズンであれば、タクシーはバスに置き換え可能。